おはようございます。理学療法士の水尻です。今日は488日目の投稿です。
今回は、「安全」について考えてみたいと思います。野村克也さんの著書に、『小事が大事を生む』という言葉があります。野村さんは、日々の小さな気づきや積み重ねが、大きな成果につながるという意味でこの言葉を用いていました。一方で、「小事が大事を生む」という言葉には、小さなことをおろそかにしていると、いつか大きな問題につながるという意味もあります。私たちの職場にも、日常の中にさまざまな危険が潜んでいるかもしれません。普段は何気なく過ごしている場所でも、少し視点を変えることで危険に気づくことがあります。「これくらい大丈夫」という小さな油断が、思わぬ事故につながることもあります。だからこそ、些細なことでも気づいたら改善することが大切です。また、自分以外の周囲に危険なことを見つけた場合も、声をかけ合いましょう。一人ひとりの小さな気づきが、大きな事故を防ぐことにつながります。「小事が大事を生まないように。」今日も頑張りましょう。

腰痛の現場では「股関節が硬いと腰に負担がかかる」という言葉をよく耳にします。
では、腰椎すべり症の場合はどうでしょうか。
結論として、股関節の可動域が狭い場合、股関節で補えない動きを腰椎が代償することで、腰への負担が増える可能性があります。
その背景には、股関節と腰椎が密接に連動して動く 「Hip-Spine Syndrome(ヒップ・スパイン・シンドローム)」 という考え方があります。
この記事では、股関節の硬さが腰椎すべり症の方の身体の動きにどのように影響するのか、そして今日からできる対策について、理学療法士の視点からわかりやすく解説します。
腰椎すべり症とは?
腰椎すべり症とは、腰の骨である腰椎が、前後方向にずれてしまう状態を指します。
大きく分けると、次の2種類があります。
- ・分離すべり症:腰椎の「椎弓」という部分の分離を伴って起こるもので、比較的若い年代からみられることがあります。
- ・変性すべり症:加齢などによる椎間板や椎間関節などの変性に伴って起こり、中高年以降に多くみられます。
腰椎すべり症では、腰痛だけでなく、神経が圧迫されることで、お尻や脚の痛み・しびれが出ることもあります。
症状は人によって異なるため、「腰椎がすべっている=必ず強い症状が出る」というわけではありません。
なぜ股関節が硬いと腰に負担がかかりやすいのか?
1.股関節と腰椎は連動して動く
私たちが立つ、歩く、しゃがむ、物を拾うといった動作をするとき、股関節だけ、あるいは腰だけが動いているわけではありません。
股関節・骨盤・腰椎が協調して動くことで、身体をスムーズに動かしています。
しかし、股関節の動きが硬くなると、本来股関節で行うはずだった動きを腰椎や骨盤で補うことがあります。
その結果、腰椎が必要以上に動く場面が増え、腰の関節や周囲の組織に負担がかかる可能性があります。
ポイント
股関節が動きにくい
↓
骨盤や腰椎が代わりに動く
↓
腰に負担が集中する可能性
2.股関節の伸びにくさと「反り腰」
歩くときや立っているときには、股関節を後ろに伸ばす「股関節伸展」の動きが必要です。
しかし、股関節が十分に伸びない場合、骨盤を前に傾けたり、腰椎を反らせたりすることで身体の位置を調整することがあります。
このような代償動作が繰り返されることで、腰椎周囲への負担が増える可能性があります。
特に腰を反らすことで症状が出やすい方は、股関節の動きや骨盤の位置を一緒に確認することが大切です。
3.股関節の回旋が硬いと腰を捻りやすくなる
歩行やスポーツでは、股関節の「内旋・外旋」といった回旋運動も重要です。
股関節が十分に回らない場合、その動きを腰椎で補ってしまうことがあります。
腰椎は股関節ほど大きな回旋運動を得意としているわけではありません。
そのため、股関節の動きが少ない状態で、歩行やスポーツなどの捻り動作を繰り返すと、腰部への負担が増える可能性があります。
股関節の硬さと腰椎すべり症の関係
腰痛のある方では、股関節の可動域が低下していることがあります。
特に、
- ・股関節を後ろに伸ばしにくい
- ・股関節を内側・外側に回しにくい
- ・しゃがむときに股関節が十分に曲がらない
といった状態では、腰椎や骨盤による代償動作が起こりやすくなります。
ただし、「股関節が硬いから腰椎すべり症になる」「股関節を柔らかくすればすべり症が治る」と単純に考えることはできません。
腰椎すべり症には、年齢、骨の形態、椎間板や椎間関節の状態、筋力、姿勢、活動量など、さまざまな要因が関係します。
そのため、股関節の柔軟性だけを見るのではなく、身体全体の動き方を評価することが重要です。
股関節が硬い人が注意したい日常動作
● 長時間立っている
股関節を伸ばしにくい状態では、骨盤を前に傾けたり腰を反らしたりして立つことがあります。
長時間同じ姿勢を続けることで、腰の疲労感や痛みにつながる場合があります。
● 物を拾う・前屈する
床にある物を拾うとき、股関節を十分に曲げずに腰だけを大きく曲げると、腰への負担が増えることがあります。
「腰から曲げる」のではなく、「股関節を使って身体を前に倒す」ことを意識してみましょう。
● 歩行
歩行では、股関節を後ろへ伸ばす動きや、骨盤の回旋が必要です。
股関節の動きが小さいと、骨盤や腰椎が大きく動いて補うことがあります。
● スポーツ
ランニングやゴルフ、野球など、身体を繰り返し捻るスポーツでは、股関節の動きが重要です。
股関節が十分に動かない状態で無理に腰を捻ると、腰部への負担が増える可能性があります。
今日からできる対策
股関節の動きを整えることは、腰への負担を減らすための一つの方法です。
ただし、腰椎すべり症の方は症状によって適した運動が異なるため、痛みやしびれが出ない範囲で無理なく行うことが大切です。
1.股関節伸展ストレッチ
股関節の前側にある腸腰筋などをやさしく伸ばします。
- 片膝立ちになります。
- 前側の足に体重をかけます。
- 腰を反らさず、骨盤を軽く後ろに傾けます。
- 後ろ側の股関節の前面が伸びるところで止めます。
- 20〜30秒程度キープします。
腰を反って無理に伸ばすのではなく、「股関節の前が伸びている感覚」を意識しましょう。
2.ハムストリングスストレッチ
太ももの裏側の筋肉であるハムストリングスをやさしく伸ばします。
- 椅子に座ります。
- 片脚を前に伸ばします。
- 背中を丸めすぎないようにします。
- 股関節から身体を前に倒します。
- 太ももの裏が軽く伸びるところで止めます。
- 20〜30秒程度キープします。
無理に身体を前へ倒す必要はありません。
3.股関節の内旋・外旋運動
仰向けで寝て、膝を軽く曲げた状態から、両膝を左右へゆっくり倒します。
股関節の回旋を意識しながら、痛みのない範囲でゆっくり行いましょう。
左右5〜10回程度を目安に行います。
4.ブリッジ
お尻の筋肉である大殿筋を使う運動です。
- 仰向けになり、膝を曲げます。
- 足を肩幅程度に開きます。
- お腹に軽く力を入れます。
- お尻をゆっくり持ち上げます。
- 腰を反らしすぎないようにします。
- ゆっくり元に戻します。
10回程度を目安に、無理のない範囲で行いましょう。
5.ドローイン
お腹の深い部分にある筋肉を意識しながら、体幹を安定させる練習です。
- 仰向けで膝を曲げます。
- お腹に手を置きます。
- 息をゆっくり吐きながら、おへそを軽く引き込むようにします。
- 呼吸を止めずに、その状態を数秒保ちます。
- 力を抜いて休みます。
強くお腹をへこませる必要はありません。自然な呼吸を続けながら行いましょう。
腰椎すべり症の方が運動するときの注意点
腰椎すべり症がある場合、「柔軟性を高めれば高めるほど良い」というわけではありません。
特に、腰を大きく反らす動作や、強く捻る運動によって症状が悪化する方もいます。
次のような場合は運動を中止してください。
- 腰痛が強くなる
- お尻や脚のしびれが増える
- 脚の痛みが強くなる
- 運動後も症状が長く続く
- 脚に力が入りにくくなる
症状がある場合は、自己流で運動を続けるのではなく、医師や理学療法士に相談し、自分の身体に合った運動方法を確認することをおすすめします。
まとめ
今回は、腰椎すべり症と股関節の動きの関係について解説しました。
- ・股関節と腰椎は、日常動作の中で連動して動いています。
- ・股関節の動きが少ないと、骨盤や腰椎が代わりに動くことがあります。
- ・股関節の伸展・内旋・外旋などの動きを確認することが大切です。
- ・股関節の柔軟性だけでなく、体幹やお尻の筋力、身体の使い方も重要です。
- ・痛みやしびれがある場合は、無理なストレッチや運動を避けましょう。
腰椎すべり症では、「腰だけを見る」のではなく、股関節・骨盤・腰椎を含めた身体全体の動きを見ることが大切です。
「股関節が硬い」「腰を反ると痛い」「歩くと腰が疲れる」などの症状がある方は、股関節の動きも一度確認してみましょう。
毎日のちょっとしたストレッチや運動を無理なく続けながら、自分の身体に合った方法を見つけていくことが、腰への負担を減らす第一歩になります。
※注意
この記事は腰椎すべり症や股関節の動きに関する一般的な情報をまとめたものです。症状の原因や適切な運動方法は人によって異なります。腰や脚の強い痛み、しびれ、筋力低下、排尿・排便の異常などがある場合は、運動を中止し、早めに医療機関へご相談ください。



