おはようございます。理学療法士の水尻です。今日は485日目の投稿です。
「そんなの当たり前。」誰もが一度は言われたことのある言葉ではないでしょうか。私は最近、「当たり前」という言葉について考えることがありました。話し方について勉強していたとき、ある本に「言葉は相手に伝わるまでに2回歪む。自分の辞書で1回、相手の辞書で1回。」という言葉がありました。人はそれぞれ、育ってきた環境や経験、価値観が違います。だから、自分にとって「当たり前」のことが、相手にとっても「当たり前」とは限りません。「普通はこうするでしょ」「これくらい分かるでしょ」そう思っていることも、実は自分の中だけの「当たり前」なのかもしれません。だからこそ、誰かに何かを伝えるときは、「自分がどう伝えたか」だけではなく、「相手にはどう伝わったか」を考えることが大切なのだと思います。「当たり前」という言葉を使う前に、「それは本当に当たり前?それとも、自分にとっての当たり前?」一度立ち止まって考えてみたいと思いました。

前回の記事では、パーキンソン病の特徴や主な症状、進行の仕方、診断後にまず行うことについて解説しました。
今回はその続きとして、パーキンソン病のリハビリテーションについて詳しく説明します。
「歩けなくなってからリハビリを始める」と考えている方もいますが、実際には診断直後の早い段階から取り組むことが重要です。
リハビリは薬物療法と組み合わせながら、身体機能や日常生活動作を維持し、できるだけ自分らしい生活を続けるために行います。
1.パーキンソン病のリハビリとは
パーキンソン病のリハビリは、単に筋力をつけるだけではありません。
「生活に必要な動作をできるだけ行いやすくすること」が大きな目的です。
- ・歩く
- ・立ち上がる
- ・寝返る
- ・着替える
- ・食事をする
- ・会話をする
こうした日常動作は、病気による動作の遅さや筋肉のこわばり、活動量の低下による筋力低下などが重なることで、徐々に難しくなることがあります。
この悪循環を防ぐため、次のような内容を組み合わせてリハビリを行います。
- ・ストレッチ
- ・姿勢を整える運動
- ・筋力トレーニング
- ・歩行練習
- ・バランス練習
- ・有酸素運動(自転車・ウォーキングなど)
- ・寝返り・起き上がり練習
- ・立ち上がり・方向転換の練習
- ・すくみ足への外部刺激
- ・転倒しにくい環境づくり
- ・ご家族・介護者への動作指導
運動療法によって、身体機能・筋力・バランス・歩行などの改善や、生活の質の維持・向上が期待されています。
ただし、リハビリで病気そのものを治したり、進行を完全に止めたりすることはできません。
「できている動作を保つ」「生活の困りごとを減らす」ことがリハビリの大切な目的です。
2.リハビリの主な内容
パーキンソン病のリハビリは、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師・薬剤師・医師など、多職種が連携して行います。
● ストレッチと関節運動
こわばりや前かがみ姿勢により、首・背中・肩・股関節・足首などが動かしにくくなることがあります。
そこで、次のような運動を行い、身体の柔軟性を保ちます。
- ・首をゆっくり左右に向ける
- ・背中を伸ばす
- ・体幹をひねる
- ・肩甲骨を動かす
- ・股関節を伸ばす
- ・ふくらはぎ・太ももの裏を伸ばす
- ・足首をゆっくり動かす
勢いをつけず、呼吸を止めないことがポイントです。
● 筋力トレーニング
活動量が減ると脚や体幹の筋力が低下し、立ち上がりや歩行がさらに難しくなることがあります。
そのため、現在の身体機能に合わせて筋力トレーニングを行います。
- ・椅子からの立ち上がり
- ・かかと上げ
- ・膝伸ばし
- ・足踏み
- ・手すりを使ったスクワット
- ・ベッド上での足の曲げ伸ばし
立ち上がりでは、身体を前に倒す動作が小さくなりやすいため、「しっかり前に体重を移す」ことを意識することが大切です。
● 歩行練習
歩行では、「大きく」「リズムよく」「足をしっかり床から離す」ことを意識します。
すくみ足が起こりやすい場面
- ・歩き始め
- ・立ち上がり直後
- ・方向転換
- ・狭い場所
- ・ドアの出入り
- ・人混み
- ・急いでいるとき
すくみ足への対処法
- ・「1、2、1、2」と声を出す
- ・メトロノームや音楽のリズムを使う
- ・床の線をまたぐ
- ・大きく一歩を踏み出すことを意識する
- ・方向転換は大きく弧を描くように行う
- ・必要に応じて杖や歩行器を活用する
音刺激や視覚刺激などの外部からの合図を利用することで、歩幅や歩き始めが改善する場合があります。
● バランス練習
転倒を予防するためには、バランス能力を維持することも重要です。
- ・座位で身体を左右に動かす
- ・立位で体重を左右・前後に移動する
- ・前後に足を踏み出す
- ・支えを持って足踏みする
- ・方向転換の練習
- ・手を伸ばす動作
- ・段差や床の状態に合わせて歩く練習
転倒の危険性がある運動は、一人で無理に行わず、必要に応じて専門職のサポートを受けましょう。
● 作業療法(生活動作の練習)
作業療法では、実際の生活で困っている動作を練習します。
- ・ボタン留め
- ・箸・スプーンの使用
- ・財布からお金を出す
- ・字を書く
- ・洗顔・歯磨き
- ・着替え
- ・台所での安全な作業
また、面ファスナーの衣類や太めの柄の食具など、道具を工夫することで動作を行いやすくすることもあります。
● 言語療法・嚥下訓練
パーキンソン病では、声が小さくなったり、飲み込みにくくなったりすることがあります。
必要に応じて言語聴覚士が以下のようなリハビリを行います。
- ・声を大きく出す練習
- ・ゆっくり・はっきり話す練習
- ・呼吸と発声の練習
- ・舌・口周りの運動
- ・食事姿勢の調整
- ・食事形態のアドバイス
- ・飲み込みの評価と訓練
「声が小さくなった」「食事中によくむせる」といった変化があれば、早めに相談することが大切です。
3.病期によるリハビリの違い
| 病期 | 主な目標 |
|---|---|
| 初期 | 運動習慣づくり、姿勢・柔軟性の維持、体力低下の予防 |
| 中期 | 歩行・バランス改善、転倒予防、すくみ足対策 |
| 進行期 | 移乗・着替えなど生活動作の安全確保、福祉用具の活用 |
| 重症期 | 関節拘縮・褥瘡予防、呼吸・嚥下の維持、介助負担の軽減 |
どの段階でもリハビリには意味があります。
ただし、病期や症状によって必要な内容は変わるため、その時の身体機能や生活状況に合わせてリハビリ内容を調整することが重要です。
4.自宅で続けるためのポイント
● 毎日少しずつ行う
長時間の運動を一度に行うよりも、短い時間でも無理なく継続することが大切です。
自宅での一日の例
- ・朝:呼吸・背伸び・体幹ストレッチ
- ・日中:歩行・自転車などの有酸素運動
- ・夕方:立ち上がり・足踏み
- ・夜:軽い関節運動
ただし、運動内容や時間は身体の状態に合わせて調整してください。
● 薬が効いている時間を活用する
パーキンソン病では、薬の効果によって身体が動きやすい時間帯と、動きにくい時間帯が変化することがあります。
比較的動きやすい「オン」の時間帯に歩行や立位での運動を行うと、安全に取り組みやすい場合があります。
一方、身体が動きにくい「オフ」の時間帯は、座ってできる運動や休息を中心にするなど、状況に応じて調整します。
● 動作を大きくする
パーキンソン病では、身体の動きが小さくなりやすいため、日常生活の中でも「大きな動き」を意識することがポイントです。
- ・大きく歩く
- ・かかとから足をつく
- ・腕を後ろに振る
- ・背中を伸ばす
- ・ゆっくり立ち上がる
- ・一度止まってから方向転換する
5.安全に続けるために
● 運動を中止・変更する目安
次のような症状がある場合は、無理に運動を続けず中止・休憩しましょう。
- ・強いめまい
- ・胸の痛み・息苦しさ
- ・発熱
- ・強い痛み
- ・強いふらつき
- ・転倒しそうな状態
- ・身体が急に動かなくなった
- ・意識がぼんやりする
- ・強い疲労が長く続く
● 一人で行わないほうがよい場合
- ・最近転倒が増えている
- ・すくみ足が頻繁に起こる
- ・立ちくらみがある
- ・薬の効き目に大きな波がある
- ・バランスが不安定
- ・注意力の低下がある
- ・過去に運動中の転倒がある
このような場合は、専門職に動作を確認してもらい、安全な運動方法や杖・歩行器などの補助具について相談しましょう。
リハビリは「できること」を増やすための取り組み
パーキンソン病のリハビリでは、単に「筋力をつける」「歩行を練習する」だけではありません。
例えば、
- ・「近所まで自分で歩きたい」
- ・「自分で着替えたい」
- ・「旅行を続けたい」
- ・「トイレまで安全に移動したい」
- ・「家族と一緒に外出したい」
といった本人が大切にしている生活上の目標を具体的にすることが重要です。
その目標に合わせて、歩行練習・筋力運動・バランス練習・動作方法・環境調整などを組み合わせます。
まとめ
パーキンソン病のリハビリは、「歩けなくなってから始めるもの」ではありません。
診断後の早い段階から運動習慣をつくり、身体機能や日常生活動作をできるだけ維持することが大切です。
リハビリでは、
- ・ストレッチ・関節運動
- ・筋力トレーニング
- ・歩行練習
- ・バランス練習
- ・有酸素運動
- ・すくみ足への対策
- ・生活動作の練習
- ・嚥下・発声へのアプローチ
- ・転倒予防・環境調整
などを、症状や生活状況に合わせて行います。
パーキンソン病のリハビリは、病気を治すためだけではなく、「今できていることをできるだけ長く続ける」「自分らしい生活を維持する」ための取り組みです。
初期から進行期まで、どの段階でもリハビリには役割があります。
無理をするのではなく、その時の身体の状態に合わせて内容を調整しながら、できることを少しずつ続けていきましょう。
「最近歩きにくくなった」「転倒が増えた」「すくみ足が気になる」など、生活の中で困っていることがあれば、主治医やリハビリスタッフに相談してみてください。



