おはようございます。理学療法士の水尻です。今日は483日目の投稿です。
少し驚くニュースをお伝えします。この真夏に、首都圏でインフルエンザの感染者が増加しています。東京・神奈川・埼玉の複数地点で、すでに流行期の基準を超えており、埼玉の一部では定点あたり3人を超えている地域もあるそうです。「インフルエンザは冬のもの」というイメージがありますよね。私もそう思っていました。でも実際には夏でも流行することがあり、むしろ「まさか今の時期に」という油断が感染を広げることもあります。感染者の約半数が子どもとのことで、夏休み中のお子さんがいるご家庭は特に注意ですね!「夏だから大丈夫」という思い込みを、一度外してみてください。お互いの健康を気にかけながら、今日も1日頑張りましょう。

前回の記事では、手根管症候群のセルフチェックやストレッチ、セルフエクササイズについて紹介しました。
今回はさらに一歩進んで、医療機関やリハビリテーションで行われる「手根管症候群のリハビリ」について解説します。
手根管症候群のリハビリは、単に手首を動かすだけではありません。
- ・神経への圧迫を減らす
- ・手首を負担の少ない位置に保つ
- ・指や手の腱の滑走を助ける
- ・仕事や家事の方法を見直す
- ・筋力や感覚の低下を確認する
- ・必要に応じて手術後の回復を支援する
このように、症状や生活スタイルに合わせて複数の方法を組み合わせて進めていきます。
※この記事は一般的な情報です。手のしびれには首・肘・肩など別の原因が関係することもあります。運動を始める前に、必要に応じて整形外科や理学療法士にご相談ください。
手根管症候群のリハビリの目的
手根管症候群では、手首の中にある「手根管」で正中神経が圧迫されています。
そのため、リハビリの目的は「神経を強く伸ばすこと」ではなく、神経や腱にかかる負担を減らし、手首を快適に使える状態へ整えることです。
主な目的は次のとおりです。
- ・夜間のしびれや痛みを軽減する
- ・手首を圧迫しやすい姿勢を減らす
- ・正中神経や指の腱の滑走を助ける
- ・手首や指のこわばりを防ぐ
- ・親指の機能やつまむ力を維持する
- ・仕事や家事での手の使い方を改善する
- ・症状の悪化や再発を予防する
ただし、リハビリだけで神経の圧迫が必ず改善するわけではありません。 症状が強い場合や筋肉の萎縮がある場合は、医師による評価や治療が必要です。
リハビリ前の評価:症状を詳しく確認する
医療機関でリハビリを始める前には、理学療法士や作業療法士などが手の状態や動きを確認します。
● 症状の場所と時間帯
- ・どの指がしびれるか
- ・手のひら側か、手の甲側か
- ・夜間や明け方に強いか
- ・作業中に悪化するか
- ・手を振ると軽くなるか
- ・片手か両手か
症状の出る範囲や時間帯を確認することで、手根管症候群の可能性や、首・肘など別の場所で起こる神経障害との違いを考えます。
● 感覚の確認
- ・軽く触れたときの左右差
- ・紙や布などの感触の違い
- ・ボタンや硬貨を見ずに触って判別できるか
- ・目を閉じて指の位置が分かるか
感覚が低下している場合は、熱さや痛みに気づきにくくなることもあるため、日常生活での注意が必要です。
● 筋力と手の使い方
症状が進むと、親指の付け根の筋肉が弱くなることがあります。
- ・親指と人差し指で物をつまむ
- ・親指を手のひらから離す
- ・ペットボトルを持つ
- ・箸やペンを使う
- ・ボタンを留める
- ・タオルを軽く絞る
握力だけでなく、親指の使い方や手首の力みも重要な確認ポイントです。
装具療法:手首を休ませるためのサポート
手根管症候群では、夜間に手首が強く曲がることで、手根管内の圧迫が強くなり、症状が悪化することがあります。
そのため、手首を中間位に近い状態で保つ夜間装具が使用されることがあります。
● 装具を使用するときの注意点
- ・きつく締めすぎない
- ・指先が冷たくならないか確認する
- ・指の色が変わらないか確認する
- ・装具によってしびれが強くなる場合は使用を中止する
- ・医師や療法士の指示に従う
装具は「長くつければよい」というものではありません。症状や仕事・家事の内容に合わせて使用方法を調整することが大切です。
日常生活や仕事の調整
手根管症候群の改善や悪化予防では、運動だけでなく手の使い方を見直すことも重要です。
● 手首を極端に曲げない・反らしすぎない
- ・手首を極端に曲げない
- ・手首を反らしすぎない
- ・指先だけでなく手全体を使う
- ・肘や肩の力を抜く
● 強く握り続けない
- ・持ち手を太くする
- ・滑りにくいグリップを使用する
- ・可能な場合は両手を使う
- ・強く握る時間を短くする
- ・作業の途中で手を開いて休ませる
● 作業を分散する
症状が強くなってから長時間休むのではなく、症状が出る前に短い休憩を入れることも大切です。
リハビリで行う運動療法
1.指の腱グライディング
手根管の中を通る指の腱を、やさしく動かすための運動です。
- ・指をまっすぐ伸ばす
- ・フックの形にする
- ・まっすぐな握りこぶしを作る
- ・軽く握る
- ・再び指を伸ばす
各姿勢を数秒程度保ちながら、ゆっくり行います。
目安:5回程度から開始
痛みやしびれが増える場合は中止しましょう。
2.正中神経グライディング
これは神経を強く伸ばす運動ではなく、神経の滑らかな動きを促すことを目的としたやさしい運動です。
- ・肘を軽く曲げ、腕を体の横に置く
- ・手のひらを上に向ける
- ・指を軽く伸ばす
- ・手首を少し反らす
- ・しびれが出ない範囲で肘をゆっくり伸ばす
- ・ゆっくり元の姿勢に戻す
痛みや電気が走るようなしびれが出る場合は中止してください。
3.手首の軽い運動
痛みが強くない場合は、手首を小さく動かしてこわばりを防ぎます。
- ・手首を少し曲げる → 中央に戻す
- ・手首を少し反らす → 中央に戻す
大きく動かす必要はありません。症状が出ない範囲でゆっくり行うことがポイントです。
リハビリで行うストレッチ
神経症状がある場合、ストレッチは慎重に行います。
● 前腕のストレッチ
- ・肘を軽く伸ばす
- ・手のひらを上に向ける
- ・反対の手で指先を支える
- ・手首をゆっくり曲げる
- ・前腕が軽く伸びる位置で10〜15秒保持する
ポイントは、「しびれるところまで伸ばさない」ことです。
軽く伸びる程度で止め、しびれや痛みが増える場合は中止してください。
症状に合わせたリハビリの進め方
● 軽いしびれの場合
- ・作業姿勢の見直し
- ・夜間装具の検討
- ・軽いストレッチ
- ・腱グライディング
- ・短時間の神経グライディング
● 作業中に症状が出る場合
次のような点を確認します。
- ・手首の角度
- ・握る力の強さ
- ・作業時間
- ・肩や肘の力み
- ・机や作業台の高さ
必要に応じて、作業環境や道具の使い方を調整します。
● 夜間症状が強い場合
寝ている間に手首が曲がっていないかを確認し、必要に応じて夜間装具の使用を検討します。
● 筋力低下がある場合
親指の力が入りにくい、物を頻繁に落とす、親指の付け根がやせている場合は、自己流の運動を続けるよりも医師の診察を優先しましょう。
手術後のリハビリ
手術後は、傷口の状態や医師の指示を確認しながら、手や指の動きを回復させていきます。
確認する主な項目は次のとおりです。
- ・傷口の状態
- ・腫れや熱感
- ・指の動かしやすさ
- ・しびれの変化
- ・親指の動き
- ・つまむ・握る動作
- ・仕事や家事への復帰時期
手術後にすべての方へ同じ内容のリハビリが必要とは限りませんが、痛み・こわばり・筋力低下などがある場合には、状態に合わせたリハビリが役立つことがあります。
リハビリ中に避けたいこと
- ・手首を強く反らすストレッチ
- ・しびれを我慢する神経ストレッチ
- ・強い握力トレーニング
- ・痛みがある状態での腕立て伏せ
- ・手首を長時間曲げたままにする
- ・手のひら側への強いマッサージ
- ・症状が悪化しているのに運動を続ける
リハビリでは「効いている感じ」よりも、運動中や運動後に症状が悪化しないことを重視しましょう。
🏥 受診を優先したいケース
次のような症状がある場合は、セルフケアだけで様子を見ず、整形外科などの医療機関へ相談しましょう。
- ・しびれが常にある
- ・夜間に何度も目が覚める
- ・親指の力が落ちている
- ・物を頻繁に落とす
- ・親指の付け根がやせている
- ・感覚が明らかに鈍い
- ・数週間以上症状が続く
- ・セルフケアで改善しない
- ・症状が急速に悪化している
早期であれば、装具や生活・作業環境の調整などによる保存療法が検討されることがあります。
一方で、神経への圧迫が長期間続き、筋力低下や筋肉の萎縮が進んでいる場合は、運動だけでは改善が難しいこともあります。
📝 まとめ
手根管症候群のリハビリは、単純に手首をたくさん動かすことが目的ではありません。
- ・手首を圧迫しにくい位置に保つ
- ・夜間の手首の曲がりを減らす
- ・仕事や家事での負担を調整する
- ・指の腱をやさしく動かす
- ・正中神経を強く引っ張らず、滑らかな動きを促す
- ・症状の変化を確認しながら進める
軽いしびれであれば、装具や作業環境の見直し、適切な運動によって症状の改善が期待できる場合があります。
一方で、筋力低下や筋肉の萎縮がある場合は、早めの診察が重要です。
「運動すれば必ず治る」のではなく、「自分の症状に合ったリハビリを選ぶこと」が、手を長く使い続けるための第一歩です。
手のしびれや痛みでお困りの方は、無理に自己流で運動を続けず、お気軽に整形外科やリハビリスタッフへご相談ください。



