股関節の手術後に「足が長くなった気がする」のはなぜ?
おはようございます。理学療法士の水尻です。今日は、270日目の投稿です。
今回は、人工股関節全置換術(THA)を受けた方の多くが感じる「脚長差」について、実際の変化と感覚的な違和感の両面から解説します。
THAは、変形性股関節症などで痛みや可動域の制限がある方にとって、生活の質を大きく改善する手術です。しかし術後、「足が長くなった気がする」「左右で違和感がある」と感じる方が少なくありません。
その理由を、医学的な視点と身体感覚の変化から紐解いていきましょう。
✅ 実際に脚が長くなることがある
THAでは、人工関節を設置する際に、関節の安定性や脱臼予防を考慮して、骨頭の位置を微調整します。
- 骨頭の位置調整:人工骨頭をわずかに下方に設置することで、安定性を高めます。
- 脱臼予防:股関節を少し長めに設定することで、術後の脱臼リスクを軽減します。
この結果、実際に脚が数ミリ〜1cm程度長くなることがあります。
🧠 感覚的な脚長差の理由
実際の長さが大きく変わっていなくても、「長くなった気がする」と感じることがあります。その背景には、以下のような要因があります。
- 筋肉の緊張と柔軟性の変化:術前は関節の変形や痛みにより筋肉が短縮していたため、術後に関節の位置が正されると、筋肉が伸ばされる感覚になります。
- 骨盤の傾き:長年の痛みや姿勢の癖で骨盤が歪んでいると、左右の脚の長さに違和感を覚えることがあります。
- 脳の再学習:長期間の変形によって脳が「短い脚」として認識していたため、術後の新しいバランスに慣れるまで違和感が残ることがあります。
🏃♀️ リハビリでの対応と経過
術後の違和感は、理学療法によって徐々に改善されていきます。
- 骨盤・体幹のアライメント調整
- 股関節周囲の筋肉(中殿筋・大腿筋膜張筋・腸腰筋など)の柔軟性回復
- 歩行時の荷重バランス練習
- 必要に応じてインソール調整
多くの方は、術後3〜6ヶ月の間に違和感が落ち着き、「慣れてきた」と感じるようになります。
🎯 まとめ
THA後の「脚が長くなった気がする」という感覚は、
- 実際の関節位置の変化
- 筋肉や骨盤のバランス
- 脳の感覚再適応
これらが複合的に関係しています。術後は焦らず、リハビリを通じて新しい身体感覚に慣れていくことが大切です。


