THA後に注意したい腰痛や膝痛の原因とは?

おはようございます。理学療法士の水尻です。今日は、263日目の投稿です。


人工股関節全置換術(THA)を受けた方の多くは、術後に股関節の痛みが軽減し、歩行が安定してきます。 しかしその一方で、「腰が痛い」「膝が痛くなった」と新たな不調を訴えるケースも少なくありません。

これらの痛みは、術前からの代償動作や筋バランスの崩れが残ったまま、身体が新しい動きに適応しきれていないことが原因であることが多いのです。

🦵 THA後の身体の変化と再適応

THAによって股関節の可動域が広がり、痛みが軽減されることで、これまで制限されていた動作や姿勢が可能になります。 しかし、長期間にわたる疼痛回避姿勢や筋力低下が残っていると、他の部位に負担がかかりやすくなります。

🔍 よく見られる代償動作

  • 骨盤の傾きや回旋が固定化している
  • 股関節伸展制限の代償で腰椎が過伸展している
  • 荷重側・非荷重側の筋活動が左右非対称のまま残っている

このような状態では、腰部や膝関節が過剰に動員され、痛みを引き起こす可能性があります。

💥 腰痛の原因とメカニズム

  • 骨盤前傾の過剰化:股関節の伸展可動域が不十分なまま立位や歩行を行うと、腰椎の伸展代償が増大
  • 体幹筋のアンバランス:中殿筋や大殿筋の筋力低下により、体幹が不安定となり腰部に緊張が生じる
  • 脚長差による側弯ストレス:術後のわずかな脚長差が、腰部の回旋負担を助長

🦵 膝痛の原因とメカニズム

  • 荷重軸の変化:股関節アライメントの修正により、膝への力のかかり方が変化
  • 大腿筋群の過緊張:歩行再獲得時に膝伸展パターンを代償的に使うことで筋緊張が高まる
  • 臀筋群の機能低下:股関節外転筋が十分に働かないと、膝外反ストレスが増加

🎯 理学療法士が注目すべきポイント

  • アライメント評価: 骨盤―股関節―膝のラインを立位・歩行の両方で確認し、左右差や代償動作を早期に把握
  • 骨盤可動性と体幹制御: 骨盤の動きが硬すぎても柔らかすぎても腰部への負担が増すため、体幹の安定性が重要
  • 股関節周囲筋の再教育: 中殿筋・大殿筋・腸腰筋のバランス強化で股関節の安定性を高める
  • ADLの再学習: 立ち上がりやしゃがみ姿勢での荷重軸を修正し、正しい運動パターンを獲得

🔚 まとめ:THA後のリハビリは「全身の再構築」

THAによって股関節の痛みが取れたからといって、リハビリが終わったわけではありません。むしろ、そこからが本当のスタートです。
術後は、股関節だけでなく体幹や下肢全体のバランスを評価し、運動連鎖を再構築することで、腰や膝の新たな痛みを予防することができます。